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名古屋高等裁判所 昭和46年(ラ)8号 決定 1971年4月13日

抗告人 村田俊夫(仮名)

相手方 村田さよ子(仮名) 外七名

主文

原審判を取り消す。

本件を津家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件即時抗告の要旨は、亡村田作治郎の遺産分割に関する原審判は一方的な証拠によるものであるから、これを取り消し、更に相当の審判を求める、というにある。

職権により判断する。

家事審判法第九条第一項乙類一〇号所定の遺産分割の審判は遺産を各共同相続人に分割することを趣旨とするものであり、ある特定の財産が共同相続人の一部の者の固有の財産であることを確認することは民事訴訟法による訴訟事件において決せられるべきことであつて、遺産分割の審判の主文においてこれを宣言することは法律上許されないものというべきである。しかるに原審判主文第一項は同項記載の各財産につき一部当事者が単独所有権もしくは共有持分権を有することを確定する旨を宣言し、これを理由説示と対照するときは、右主文第一項は右の各財産が本件相続財産に包含されず、もともと右一部当事者の所有もしくは共有に属するものであることを確認する趣旨のものであることが明らかであるから、原審判は民事訴訟事項を非訟手続により裁判をした違法がある。

次に原審判は、証人安田新太郎の証言によると原審判主文第一項(4)(5)(6)の各不動産は被相続人とその長男亡村田雄一とが昭和一五年頃代金各二分の一宛を出し合つて共同購入した事実が認められると認定し、右事実に基づき亡雄一が右各不動産の二分の一の共有持分を取得したと判断して、これを本件相続財産から除外したのであるが、右証人安田新太郎の証言によれば、右各不動産は安田金助が仲に入つて被相続人に買わせたものであり、同証人は後日被相続人から右売買代金の半額は雄一が支弁したことを聞いたというのであり、右証言によれば右各不動産は被相続人が単独で買い受けたものであり、亡雄一は被相続人の右所有権取得を資金面で援助したことを認めうるのみであつて、原審判が認定したような共同購入の事実を認める余地はなく、他に亡雄一が右各不動産につき各二分の一の共有持分を取得したことを認めるに足る証拠はない。したがつて原審判には証拠に基づかず事実を認定し相続人らの相続権を一部否定した違法があり、その違法が原審判の結論に影響を及ぼすものであることは明らかである。

してみると原審判は全部これを取り消して更に審理を尽すべきものであるところ、諸般の事情を考慮するときは、これを津家庭裁判所(本庁)に差戻して審理をするのを相当と認める。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 奥村義雄 裁判官 広瀬友信 大和勇美)

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